借りぐらしのアリエッティ 感想


ハウルで絶望して以降、ジブリ映画を見ていないのだが、
いいタイミングでやっていたので見てみた。
原作であるメアリー・ノートン「床下の小人たち」は未読。
今回は珍しく酷評となるので、映画だがエロゲレビュー調で書いてみた。

シナリオ

盛り上がるところもなく、何をしたいのかも分からず、終わった印象。
借りぐらしのアリエッティ −メッセージ−」に書いてある
駿夫のメッセージは残念ながら伝わらなかった。
登場人物の心情をまるで描けていないのと、
ストーリーを補完するシーンが足りなすぎて、見ていて消化不良を起こす。
舞台を2010年の日本(小金井?多摩?)にした効果が一切なく、何がしたいのか分からない。
原作自体がこういうものだったらあれだが、
それでももっと違う見せ方があったのではないだろうかと。

キャラクター

はじめに、声優はみんなキャラに合っていて、
異様に下手とか違和感があるとかはなかったです。
翔は見ていて中二病だから仕方ないと、
自分を説得させてました。どうやら12歳のようでした。
まぁそれくらい配慮が足らなすぎる少年だったということ。
自らが生死のかかる手術前だからといって、
種族・絶滅うんぬんを語ったりして痛い!
あの独白シーンだけ明らかに浮いている。
言っていることもやっていることも中途半端。
自分よりも弱い物を助けることで、
病弱な自分でもできるのだという達成感・満足感を得ようとしているだけ、
よそから見たら思慮の足りない足手まといが偽善を振りかざして寄ってきているだけ、要は迷惑。
お手伝いのハルさんは悪者役なのだろうけれど、行動指針が不明瞭すぎる。
子供の頃に見た小人に執着しているのだろうが、動機が見えない。
最初は翔に内緒で行っていたから金が目的かと思ったら、貞子に見せたいというそぶりを見せたり、
小人との共存が目的なら、小人への扱いがぞんざいすぎるし、なにがしたいのか……
小人達はいい人達でした、わかりやすい。
特に親父がかっこよかった!これは惚れる!!!
最後に、アリエッティは絶対髪を下ろしていた方がかわいいです!

グラフィック

さすがはジブリ申し分ない。
小人のすばっしこい動きなど、すごく伝わってくる。
要所要所に、過去のジブリ作を思わせる物や構図が出てくるのだが、これは意図してやっているのか?
だとしたら冷めるだけだと言っておこう。
ジブリの作品をオマージュしたものを見に来たのではなく、新作を見に来たのだから。

音楽

記憶にない、盛り上がらなかったからな〜。
代わりにSEの使い方がよかった!!!
小人から聞こえる音というものを、迫力と共に表現できていた。
この作品の見所は、小人からみる世界の表現につきる。音声しかり絵しかり。

総評

総じて、45点
金出してまで見るものでもない、金曜ロードショーでやってれば見るかなレベル。
最初のつかみはよかったのに、なにがしたいのか見えてこずに終わった。
エンディングが流れ出して「え、もう終わり!?」って印象。
起承転結で「起」で終わってしまった感じ
(あとから考えると小さくまとまってしまった起承転結はあったが
ここまで書いて思ったんだが、
人間が何を思って何をしようとも、小人にとっては理解できない害悪でしかなく、
駿夫の言う「酷薄な人間のひきおこす嵐」なのかもしれない。

小人から見たら、人間とは混沌とした世界に生きる者達であり、交流は持つべきではないと考えるのも無理ないかも。
※追記(2010/07/19)
公式の借りぐらしのアリエッティ −解説−とか、cinema note+ 本「床下の小人たち」を読んだら、ちょっとすっきりした。
要は、登場人物の年齢を上げたことと、2010年という現代を生かせなかったことと、
子供のケンカを種族の問題提訴に盛り上げてしまったことと、家政婦の行動原理が不明なのが原因。
つか多いな原因。
原作はきっとおもしろいのだろう、それを表現できずに追加・変更した部分も制御しきれなかった脚本が悪い。